窓の眺めをよくした高床構造で人気を博した小田急電鉄の特急ロマンスカー20000形車両(愛称RSE)と10000形車両(HiSE)が今春、登場からわずか20年余りで相次いで姿を消すことになった。いずれも最も優秀な鉄道車両に贈られる「ブルーリボン賞」を受賞した名車だが、自慢の高床構造がバリアフリーの障壁となり、引退を早めてしまった。
小田急によると、RSEとHiSEは、客席からの眺望をよくするため床面を高くした「ハイデッカー」と呼ばれる構造で、乗降口に2段の階段が設けられている。この階段が、高齢者や障害者が利用しやすいよう段差解消などを定めたバリアフリー新法(平成18年12月施行)の基準を満たしていなかった。
基準に適合させるには大規模な改造が必要で、「改造費用を考えれば、新たに車両を製造した方がいい」(同社関係者)と、今年3月の引退を決めた。鉄道車両の耐用年数は車種によっても異なるが、同社では30年以上使用するのが一般的だった。20年余での引退は「小田急の歴史の中でも早い」(同)という。
RSEはJR御殿場線を経由し、沼津駅までの直通運転が始まった平成3年3月にデビュー。ハイデッカー車両に加え、当時、最新のAV機器を備えたスーパーシート(グリーン車に相当)や個室のある2階建て車両が人気を集めた。
昭和62年12月に登場したHiSEは斬新なデザインの展望席が特徴で、同社のポスターやCMにもたびたび登場する「フラッグシップ」だった。
HiSEの一部車両は長野県のローカル私鉄、長野電鉄に“再就職”し看板列車となっているが、RSEの譲渡先は見つかっていない。このままでは廃車解体となる公算が大きく、鉄道ファンらから「まだまだ使える車両なのに」といった惜しむ声が小田急に寄せられているという。